ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ないしょのおともだち』-いったい誰のことでしょう?

「ないしょのおともだち」って誰のことでしょう。

原題は、MARY and the MOUSE, THE MOUSE and MARY

マリーとねずみが、おともだち ?

でも、どうやって友達になったのでしょう。

 

       ・・・

むかし、とても大きな家に、マリーという女の子がすんでいました。

家のすみに、ちいさな家があって、ネズミの女の子がすんでいました。

 

 おとうさん、

 おかあさん、

 わたし、

 いもうと、

 おとうと。

 家族構成も同じ。

 学校へ行くのも同じです。

       ・・・

ある晩、夕飯の後片付けをして、

マリーは、

フォークを落としました。

ねずみも、夕飯の後片付けをして、

スプーンを落としました。

  

ふたりは、壁越しにお互いの存在に気がつきます。

その日から、毎晩、ふたりはわざとフォークとスプーンを落とし、お友達になります。

手をふるマリー

手をふるネズミ

マリーは大きくなり、家を出ていきます。
ネズミも大きくなり、家を出ていきます。

         ・・・

マリーはおかあさんになりました。

 モダンなおおきな家にすみました。

ネズミもおかあさんになりました。

 ちいさな家にすみました。

 誰の家に住んだのか、わかりますね?

         ・・・

ここから後半。

2人の娘たちのはなしが始まります。

マリーのむすめの マリア

ネズミのむすめの ネズネズ

ふたりは学校へ。

同じように行動しています。

ある晩、

マリアは、 を落とします。

ネズネズも、を落とします。

お互いに気がつく ふたり。

ふたりは、まい晩、わざと本を落とし、手をふりあいました。

        ・・・

そして、

マリアは、ネズネズの家をのぞき込み、

ネズネズも、マリアの家をのぞき込み、

ばったり。

ふたりは、おおきなひそひそごえで、言います。

おやすみなさい!

『ないしょのおともだち』というタイトルが読者への仕掛けになっています。読者は、誰のことなのか知りたくなってきます。絵本は表紙から始まります。はじまりの0行です。また、マリーとネズミがすでに表紙に描かれています。 読みかたりのときは、表紙を上手に使いましょう。

 
マリーが友だちになったのはねずみでした。しかし、「ねずみ」はねずみの姿をした人間の形象です。2世代にわたる友達関係の話でしたが、これって実際にあることでしょうか。きっとあることでしょう。

 

「関係」がないと思われていたところに新しい「関係」が生まれました。4人の人物たちの間に。人物と読者のなかに。人、もの、こととの新しい関係がうまれるところに、人生を豊かにするものがあるように思います。

  

バーバラ・マクリントックの絵は、 マリーとネズミ、マリアと ネズネズの時代をしっかりと描き分けています。 ご覧のように優しい雰囲気で繊細な絵です。

        ・・・

※『ないしょのおともだち』ビバリー・ドノフリオ作、バーバラ・マクリントック絵、福本友美子訳、ほるぷ出版 2009年  (2022/3/17)

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