ふるはしかずおの絵本ブログ3

『どんなにきみがすきだかあててごらん』- 「すき」を表現し合うふたり

「すき」を相手につたえることの難しさ。どのように表現したらよいのでしょうか。

 

      ・・・

チビウサギ。

デカウサギ。

お互いに言い合います。

どんなに、きみがすきだか あててごらん

     ・・・

好きな程度を比喩で表現しています。

はじめは、身体を使った表現で。

「こんなにさ」と腕を伸ばす チビウサギ。

「でも、ぼくはこーんなにだよ」と長い腕を伸ばす デカウサギ。

     

「せいのび せいいっぱい すきだよ」と、チビウサギ。

「ぼくは きみのこと、

ぼくのせいのび せいいっぱい すきだよ」と、デカウサギ。

「つまさきのさきまで、すきだよ」と、チビウサギ。

「きみのつまさきのさきまで、すきだよ」と、デカウサギ。

     

「とびあがれる こんかぎり すぎだよ」と、チビウサギ。

デカウサギは、大きくひとはねすると、耳が木の枝に届きます。

チビウサギは、

ほんとにすごいや、

あんなに 高くとべたらなあ、と思います。

 

      ・・・

つぎは、長さや距離をつかった比喩で。

「このみちをずっといって、かわにとどくぐらい」と、チビウサギ。

「かわをわたって、おかをこえたぐらい、すきだよ」と、デカウサギ。

      

「ぼく、おつきさまにとどくぐらい きみがすき」と、チビウサギ。

デカウサギは、

チビウサギを寝かせると、

おやすみなさいの キスをしました。

そして、ささやきます。

「ぼくは、きみのこと、おつきさままでいって …… かえってくるぐらい、すきだよ」

愛そのものは目に見えません。だから、うまく伝えられないことが多い。でも、デカウサギとチビウサギは、お互いに「どんなにすきなのか」を言いあっています。言葉でうまく表現できないから身体を使って。つぎは、目に見える長さや距離の表現で。子どもにもわかるストレートな表現です。「すきなこと」を相手(子ども)に向かって、身体で、口に出して、行動で素直に表現することが大切なんだなって思います。心温まる絵本でした。

 

比喩の勉強にもなります。

      ・・・

※『 どんなに きみがすきだか あててごらん 』 サム・マクラットニィ作、ニタ・ジェラーム絵、小川仁央訳、評論社 1995年  (2020/5/6)

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