ふるはしかずおの絵本ブログ3

『つぼつくりのデイヴ』- 私の家族はどこなのか?

奴隷制度があった200年ほど前のアメリカ。壷をつくって暮らしていた奴隷、デイヴについての絵本です。

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粘土のかたまりが、

つぎつぎとデイヴの仕事場に運ばれてくる。

デイヴは、川の水を粘土にそそぐ。

木のへらで混ぜる。

ちょうどいい固さになるまで。

そして、足でろくろを回す。ぐるぐる ぐるぐる。お祭りの回転木馬みたいだ。

      

デイヴの手は、壺の形をうみだしていく。帽子からウサギをとりだす手品のように。あかぎれの指で形をつくってゆく。

       

ぐるぐる ぐるぐる

ろくろが まわると、 

こまどりの胸のように壺がふくらむ。

ろくろを止め、

粘土のひもをつくる。

つぼの上にひもを重ね、ろくろをまわす。

両手でならす。

てっぺんの縁をつくると、さあ、これで出来上がり。

デイヴの頭の中にあった形が姿をあらわした。

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デイヴは、木の灰と砂をまぜて、釉薬をつくる。

壺が固まる前に、デイヴは文字を書く。自分が生きていたことを伝えるために。

 

 私の家族はどこなのか?
 すべての人─そして、国に、友情を
  1857年8月16日

壺に文字を書くことは、デイヴにとってただの署名ではありませんでした。自分が生きていた証です。壺に書かれた彼の詩が巻末の解説(「デイヴの人生」)に載せられています。そのひとつ。「十字架を背負ってこのつぼをつくったのは私 / 悔い改めない者は滅びるだろう=」。

     

画家のブライアン・コリアーについては、『キング牧師の力づよいことば』(2002年)や『ローザ』(2006年)でも紹介しています。コラージュの画法が使われていますが、コリアーにとってコラージュは、画法にとどまらない意味があります。コラージュでは「たがいに無関係のたくさんのちがったものは、張り合わされ一体となり、見る者の心に強くうったえる」のです。

 

多くの違ったものを構成するコラージュの絵は、さまざまな民族がアメリカに暮らしていることの暗喩です。また、さまざまな人種・民族の協同と平和という願いの象徴です。

 

また、独特な比喩でデイヴが壺をつくる過程を表現しています。分かりやすいだけでなく、ゆたかなイメージで彼の仕事を彩ります。2010年のコルデコット賞オナー賞受賞作品。

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※『つぼつくりのデイヴ』 レイバン・キャリック・ヒル文 ブライアン・コリアー絵 さくまゆみこ訳 光村教育図書 2012年  (2022/5/1)

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