ふるはしかずおの絵本ブログ3

『つなのうえのミレット』-映画にしてみたい絵本

少女ミレットと綱渡り師ベリーニの交流を描きます。

 

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舞台は、100年ほど前の、パリ

ミレットの母が営む宿屋に

引退した綱渡り師・べリーニがやってきました。

 

次の日、

べリーニが、

宿屋の中庭で綱渡りを始めると、

ミレットは、思い切って声をかけました。

「べリーニさん、わたしにも、それをおしえてください」

彼は断りました。

いったんおぼえてしまうと、足が地面についていられなくなるから

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でも、諦めきれない、ミレット。

一人で練習をはじめます。

すると、

べリーニは言います。

「きみには、才能があるようだね」。

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べリーニは、

ナイアガラの滝をわたり、

バルセロナの闘牛場で、

綱の上で大砲をうちならした伝説の男でした。

「鉄の心臓のもちぬし」でした。

しかし、

一度恐怖を味わったべリーニは、恐怖心を克服できずにいました。でも、ベリーニはミレットに出会ったことで、綱渡りともう一度向き合う決心をしました。

   

街の広場でつなわたりをするベリーニに、

興行師は叫びます。

「あの神業のベリーニがかえってきました!」

でも、

なにかがおかしい。

ミレットは、はじかれたように階段をのぼり、屋根の上にとびだし、綱の上にいきました。

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ベリーニは、

 微笑み、ミレットに向かって歩きだしました。

ミレットも

 空を渡りはじめました。

「ブラーヴォ! ブラーヴォ!」

人びとは湧き上がります。

でも、ふたりはといえば、つなを渡りきることだけをかんがえていました

19世紀末のパリ。個性的な人物たち。ミレット、神業の綱渡り師・ベリーニ、ミレットの母で宿屋を営むマダム・ガレット、そこに集う世界中の旅芸人たち、サーカス団の興行師……

  

ミレットのベリーニへのあこがれと揺れ動く感情、ベリーニの苦悩と決心、緊張感あふれる綱渡りのシーン。そして結末の喜びと感動。ドラマチックなストーリーです。

 

絵本を読んでいますと、映画のように動く映像が浮かびます。ミレットとベリーニが出会い綱渡りを成功させるまでの時間のなかに、 絵本のようにベリーニの過去の回想が挟まれる構成にしたら面白いと思いました。1993年コルデコット賞受賞作品です。

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※『つなのうえのミレット』 エミリー・アーノルド・マッカリー作・絵、津森優子訳、文渓堂 2013年  (2021/5/4)

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