ふるはしかずおの絵本ブログ3

『さるとわに』- ふたりの会話がおもしろい

インドの寓話集「ジャータカ物語」をもとにしたおはなしです。
ジャータカ物語とは、前世のブッダについての物語です。

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川のほとりの

マンゴーの木に、

サルたちが 住みついていました。

そばの川に、

おなかがぺこぺこの わにたちが、泳いだり、日向ぼっこをしています。

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ある日、

若いわにが、

年をとったわにに言いました。

おれは さるをつかまえて、たべてやりたいと おもってるんだ!

「あいつらは おまえよりも すばしっこいんだよ」

 
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【さるの エピソード1】

若いわには、さるを捕まえる方法を考えました。

「おさるさん! 果物がいっぱいある、あの島へいかないか。」

「ぼくは おげないんだよ!」

「おれの せなかに のっていけばよい。」

わには、にやりと笑いました。

「きみのせなかは、とてもよい のりものだね」

「そうおもうかい?」

わには、突然 水の中へ沈んでいきました。

そして、わには言います。

「おれは おまえを食べるのだ」

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ぼくを食べたいなら、いちばんおいしい心臓をもってきたのにと、さるは答えます。

しんぞうだって?

「そいつを ぼくは 木の枝に かけてきてしまったのさ」

では、心臓を持って来いと わにが命じます。

さるは、

島につくと、木によじ登り、わにに向かって、

「とれるものなら とってみろ!」

さるは、おなかをかかえて笑いました。

 

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【さるの エピソード2】

わには、

さるが 岩から岩へとびうつり、果物の島にわたっていくのを じっと見ていました。「今夜、つかまえてやる」

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夕方、

わには、岩の上によこたわって 待ち伏せをします。

「あれ? いわのかたちが おかしいぞ」

さるは、岩にむかって声をかけます。

「もしもし いわさん!」

返事がありません。

いわさん! どうして きょうは へんじをしてくれないの?

わには考えました。

岩は、あのさるとしゃべっていに違いないと。

「なんだい さるくん どうしたんだい?」

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さるは笑って、(笑)

「やあ、きみでしたか わにさん」

さるは言います。

「今度は ぼくを つかまえたようだね・・・口を大きくあけてごらん。きみの口に飛び込むよ」

さるは知っていました。

わにが口を大きく開けるとき、目を閉じるのを。

そして、

わにが、口を開けると、

さるは、口の中ではなく、

わにの頭の上へ飛び乗り、自分の木によじのぼりました。

それからというもの、

わには、いちども さるを捕まえることが できませんでした。

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「きみには、やっぱり すきを みせないことにするよ」。

知恵と機知に富むさるは、前世のブッダのたとえです。賢いさると目つきの鋭いわに、ふたりの知恵比べです。さるの賢さに感心します。そして痛快なおはなしです。 ユーモアもありました。でも、さるに危機が迫る場面は読んでいてスリルを感じます。

さるとわにの違いを際立たせて読むとおもしろいと思います。

 

絵本にはありませんが、わたしの教訓です。

  

【 教 訓 】

わにのいる世界で暮らすさるには知恵と用心深さが大切だ

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※『さるとわに』 ポール・ガルドン作 きたむらよりはる訳 ほるぷ出版 2004年  (2021/3/27)

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