ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ごんげさま』-喧嘩もするごんげ様

舞台は遠野。

ごんげ様とは「神楽舞いに使う、木でできた頭のこと」です。

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エピソード.1

ごんげ様を祀る、鱒沢村のある家のはなし。

小正月(1月15日の行事)に、

神楽舞いをよぶと、

じぶんも踊りたいと、ごんげ様は、座敷にでて暴れる。

ごんげ様を

土蔵にとじこめてから、

神楽舞いをはじめることになったという言い伝え。

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エピソード.2

ある神楽組が、

まずしい家に泊めてもらった。

夜半、

軒のはしが燃えている。

すると、

がつがつと、ものを咬む音がする。

見ると、

ごんげ様が、

飛び上がっては、咬み、

飛び上がっては、咬みして、火を消していた。

神楽舞いの一行が、これを見てしまったという話。

エピソード.3

新山神社のお祭りに、

遠野の神楽組がやってきた。

村の神楽舞いの家に泊めてもらった。

一行のごんげ様を

家のごんげ様とならべておいた。

 

真夜中、

すごい音がする。

ごんげ様が、咬みあって、闘っているではないか

やがて、

家のごんげ様が、

神楽組のごんげ様の片耳を、食いちぎった。

ごんげ様は、喧嘩をする。

たいていは、片耳が咬み取られる。

 

しかし、

耳をとられても、御利益は衰えない。

遠野には今も、

片耳のないごんげ様が、たくさん残っている。

「えほん遠野物語」と銘打たれています。

喧嘩をするごんげ様。片耳が咬み取るまでやり、とられた方が負け。しかし、耳を取られても御利益は衰えず火を消してくれます。がつがつと火を咬んでいます。この場面を頭の中にイメージ化にしてみました。迫力があり動きのある映像を楽しみました。

遠野の人たちにとって、ごんげ様は守り神です。

 

追記です。

「鬼来迎」という仏教劇の伝統芸能が、わたしの故郷・千葉県横芝光町にあります。毎年8月16日に広済寺で行われる伝統的な民間芸能です。因果応報の仏法を描く仮面劇で、地区の人だけで演じます。 

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※『えほん遠野物語 ごんげさま』 柳田国男原作、京極夏彦文、軽部武宏絵、汐文社  2018年  (2020/8/16)


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