ふるはしかずおの絵本ブログ3

『くものすおやぶん とりものちょう』- 「よしっ、おいらに まかせなっ」

春爛漫の虫の町、

くものすおやぶん、おにぐもの あみぞうは、

はえとりの ぴょんきちを連れ、町の見回りです。

      ・・・

「あっ、おやぶんさん」
「たすけてください」

お菓子の大店「ありがたや」から、店の者がかけよってきます。

「ぬすっとから てがみが きたんです」

       

こんや くらのなかの おかしを ちょうだいする」 

             かくればね

       

「ううむ、かくればねだと。なにものだ。ふていやろうだぜい。・・・よしっ、おいらに まかせなっ」

 

夜も更けたころ、

まっしろい雲が蔵に忍び込む。

「しまった。あれがかくればねか。いそげ ぴょんきち」

「がってん しょうち」

 

ごようだ

かくればねは、繭の袋にお菓子をつめて、逃げだそうとします。

ぴょんきちが、かくればねを部屋に追いつめる。

「おとなしく お縄をちょうだいしろい」

「かくればね さんきょうだいが そう簡単に捕まるものか」

 

 ばさばさばさっ。

  

いきなり飛び立つ3匹の蛾。

  

「わかったぞ はねの もようを かえて、かくれていやがったんだ」

「まてーっ、どこだーっ」

     

かくればねを見失う親分。

 

 でも・・・

 んん、まてよ……。
 かぜも ねえのに、やけに さくらが ちるじゃねぇか

 

「そこだっ」

 
 しゅぱぱぱぱぱっ。

 

親分は、 蜘蛛の糸をとばし、かくればね3兄弟を一網打尽です。

「これで いっけんらくちゃくだ」

かくればね3兄弟は、盗人稼業をやめ、いまでは町の運送屋です。 

      ・・・

時代劇の絵本というユニークな発想です。 いなせな親分、気っ風がいいくものす親分です。 「ふていやろうだぜい」「 やけに さくらが ちるじゃねぇか 」 のべらんめい調が冴えています。くものす親分、おにぐものあみぞうの魅力が一番です。また、たくさんの虫が出てきますが、人物化した虫たちですので、虫嫌いの子も抵抗感なく受け入れることができるのではないかと思います。

      

スートーリーと表現の面白さがあります。 時代劇らしい勧善懲悪の捕りもの活劇、大団円で終わります。また、七五調の文章が見えますが、リズム感をうみだしています。

        

江戸時代らしい背景のなかで、細部までしっかりと描いた絵も面白い。『源氏物語絵巻』のような吹抜屋台の技法も活用しています。構図、視点の変化が絵に動きを作り出しています。

        ・・・

※『くものすおやぶん とりものちょう』 秋山あゆ子作、福音館書店 2005年  (2022/3/6)

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