ふるはしかずおの絵本ブログ3

『くじらさんのー たーめなら えんやこーら』- でもなんのため、なにをするの?

くじらさんのー たーめなら えんやこーら」と頑張る、

 ぺんぎん、

 あざらし、

 とど、

 しろくまたち。

 (でも、何をするのでしょうか?)

     ・・・

氷山の上に、

たくさんの ぺんぎん、

あざらし、とど、しろくまが乗っています。

まんなかに くじらまで どでーんと

      ・・・

ぺんぎんとあざらしが海に飛びこみました。( 下の絵 )

「くじらさんのーたーめなら」

「えんやこーら」

ざぶーん

すると、氷山が浮きあがります。

つぎは、とどが飛びこみます。

「くじらさんのーたーめなら」

「えんやこーら」

ずぼーん

すると、氷山はさらに浮きあがります。

こんどは、しろくま。

「くじらさんのーたーめなら」

「えんやこーら」

どぶーん

     ・・・

すると、氷山はさらに浮きあがり、残ったのは

くじらだけ

くじらは、海にダイブします。

だぶーん

くじらは、これがしたかったのです。

「みなさん ありがとう」

      ・・・

でも、

ぺんぎん、

あざらし、

とど、

しろくま、

くじらは、

氷山にどのようにして登ったのでしょうか。

 ( たしかに。どのようにして?)

 

それは、海の下で「くじらさんのー たーめなら えんやこーら」と たこさんが、氷山を引っぱっていたからでした。

 ( たこが氷山の下にいるわけないよ!)

 (おはなしですから)

「くじらさんのー たーめなら えんやこーら」 と言う、タイトルが仕掛けになっています。タイトルは、テーマを示すだけでなく、読者への仕掛を含んでいます。

 

1頭のくじらのために、ぺんぎん、あざらし、とど、しろくま、たこたちは「くじらさんのー たーめなら えんやこーら」と頑張りました。何のためだったのでしょうか。それは氷山の上から飛び込みたいという、くじらの願いを実現するためでした。遊びです。でも、バカバカしいことのようにも見えます。

 

ひとりのために、「 ~ の ーたーめなら えんやこーら」とみんなが同じようなことをすることが、わたしたちの世界にもあるのでしょうか?  きっとあることでしょう。ええ、あります。 ナンセンスな絵本ですが、ユーモアだけでなく、人物や社会に対する風刺やアイロニーがあるように思います。

       ・・・

※『くじらさんのーたーめなら えんやこーら』 内田麟太郎作、山村浩二絵、鈴木出版 2015年  (2021/5/9)

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