ふるはしかずおの絵本ブログ3

『かえるの平家ものがたり』- 笑える平家物語です

大河ドラマとは違う源平の合戦を絵本でどうぞ。

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「げんじぬま」の夏の朝、

かえるの子どもたちが遊んでいる。

がまじいさんが、琵琶をべん べん べんとかきならす。

しわがれ声で歌いだす。

   

 ぎおんの おてらの かねの おと

 さらの き さらさら はなの いろ

 かぜが ふくと はなが ちる

 つよい かえるも ひっくりかえる

  

がまじいさんは、昔ばなしをする。

げんじ沼の主は げんじどの。とのさまがえるの侍だ。

ある夏に、一大事が起きた。

目玉の光るばけものが、あおがえるのおばさんに、刀傷をおわせた。

犯人は、平家ねこ

「合戦だ! 合戦だ!」

「いくさだ! いくさだ!」

      

大将は「よしなかどの」

かえるの侍は一万びき。

けれども、平家ねこには歯がたたない。一万びきのかえるの負け戦。一万びきの退却だ。

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「よりともさま」は驚いた。

どうしていいのか分からない。

そこへ、「うしわかまる」の大作戦。

     

ねこ もともと りくのもの りくで かてる わけがない

かえるは みずで たたかえば およげぬ ねこに まけはせん

     

うしわかまるは、ねこの前に 飛びだし、蓮のうえ

ねこも おおきな蓮に 飛びのった

うしわかまるは、動かない。

しめた。

ねこが、飛びかかる

とたんに、蓮が沈みだす。ねこは沼の底。

それから 小さな蟹になり 平家がにと いうそうな。

       

かえるの平家物語はこれでおしまい、これっきり。

日野十成の文章は『平家物語』のリズム感を意識し創作したものです。文章は全部ひらがなですが、分かち書きになっていますので、読みやすいものです。また、それが読みのリズムを作ります。

 

絵にもいろいろな発見があります。バッタが馬になっています。クルミの兜、ばらの棘の鍬形、たんぽぽの槍、トクサの弓と松葉の矢、からたちの棘の短刀、人の顔のような蟹の甲羅(笑い)。かえるの服装や草花の絵、吹抜屋台の構図、右へ右へと動く絵の動線などに趣向があります。本物の『平家物語』とは違い無常観はありませんが、ユーモアがあり、 笑いがある絵本です。

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『かえるの平家ものがたり』 日野十成作、斎藤隆夫絵、福音館書店 2002年 (2022/4/27)

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