ふるはしかずおの絵本ブログ3

『いつか、きっと』- 愛していると言えるようになろう

平和と未来のためのメッセージです。

子どもの思いを通して作者の思想を語ります。

でも、ちょっと難しい?

 

      ・・・

小さな島に子どもが、ひとりすわっています
 そして、世界をながめ、思います。

 子どもの見た現実は?

 子どもの思いとは、いったい何でしょうか?

  

子どもが見たのは ?

 戦う兵士たちのすがた、

 飢えに苦しむ人たち、

 貧しい暮らし、

 権力をカサに着る人、

 広い海、

 深い森、

 流れる涙、

 旗が立っている 月(moon)。

 戦争、飢饉、貧困、環境汚染、自然、悲しみ……のある世界です。

      ・・・

子どもの思いとは ?

戦う兵士を見たとき、子どもは思います。

 軍服を明るく塗りかえよう、

 銃の先を小鳥の止まり木にしてしまおうと。

飢えに苦しむ人を見たとき、子どもは思います。

 砂漠に雨を降らせ、流れる川をひこうと。

貧しいくらしを見たとき、子どもは思います。

 お金やパン、土地や空気をわけあおうと。

権力をカサに着た人を見たときは、その目をひらかせようと。

      ・・・

広い海や深い森を見たとき、子どもは思います。

 汚れた水をきれいにしよう、

 森の奥まではいり、木々の声をきこうと。

流れる涙や、月に立つ旗を見たとき

 いつか、愛していると言えるようになろう、

 月に立つ旗を抜き取り、月にあやまろうと思うのです。

       ・・・ 

そして、

世界をもう一度ながめ、子どもは心を決めます。

・・ここに、生まれてこようと。

子どもは、「いつか、きっと」この世界の矛盾や問題や罪悪を変えようと思い、この世に生まれようとします。絵本の中の「子ども」は、未来の生きる子どもです。いまの世界に、戦争、飢饉、貧困、環境汚染、人々の悲しみ……があることを伝えています。

流れる涙の場面を引用します。

       

 流れる涙がある

 それを見て子どもは思った

 ほほよせ、抱き合うことをためらってはいけない

 いつか、愛していると言えるようになろう。

 愛していると言われたことがなくても

 

語り手によって語られる「子ども」の思いは、「子ども」とは思えないほど高度な内容です。語り手(作者)の観点がストレートに表現されています。読者は、「子ども」の思い、そして世界の問題に直面させられます。考えることを求められます。「想定される読者」はわたしたち大人です。大人向けの絵本です。

        ・・・

※『 いつか、きっと 』 ティエリ・ルナン作、オリヴェ・タレック絵、平岡 敦訳、光村教育図書 2010年  (2021/6/3)

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