ふるはしかずおの絵本ブログ3

『いっぽんのきのえだ』-動物たちの木の枝の使い方

科学の絵本です。

いっぽんの木の枝を動物たちはさまざまに使っています。

      ・・・

最初は、

ただの木の枝だったのに・・・

ゾウにとって、 一本の木の枝はハエたたきになります。

ゴリラにとっては、つえ

チンパンジーにとって、それはスプーンです。

チンパンジーは、木の枝をつかって、シロアリを食べます。

     ・・・

ワニは、木の枝をおとりにつかって、鳥を捕まえます。(下の絵)

ダイサギのオスは、メスに木の枝をプレゼントします。

メスが木の枝を受け取ると巣作りがはじまります。

木の枝は、巣の材料になります。

     ・・・

巣の材料となった枝が・・・

嵐で飛ばされ、

ながれ、

ながれて・・・

犬に、ひろわれた!

木の枝を投げると、犬がキャッチ。

木の枝は犬の遊び道具になりました。

     ・・・

子供たちにとって、 木の枝はごっこあそびに使えます。

砂に絵を描く道具にも。

穴を掘れときにも使えます。

苗木の支えにもなる。

そして、

木の枝が支えた、その苗木は、

いつか・・・

みんなの家になる。

木の枝がいろいろな使われ方をしていました。 また、その意味もさまざまでした。ハエたたき、杖、スプーン、おとりの道具、プレゼント、巣の材料、あそび道具、穴を掘る道具、苗木の支えです。特にびっくりしたのは、ワニが木の枝をおとりにして鳥をつかまえることでした。「こんなことまで知らなかった」のです。

     

仏教に「一水四見」という教えがあります。

「水」は、人にとってはたいせつな飲みものですが、魚にとっては住みか、天人にとっては宝、餓鬼には飲もうとすると火に変わる苦しみの存在だというように、同じ「水」も見るものによって異なって認識されるというたとえです。『いっぽんのきのえだ』は「一水四見」のたとえ話のような絵本でした。

  

もちろん 、この絵本は仏教の「一水四見」のことを書いたものではありません。絵本の献辞にこうありました。「木の枝の、独創的でおもしろいつかいかたをあみだす天才たち、トリスタンとトラビスへ。そして、ふたりをそんなふうに育てたアランへ。」 

常識にとらわれない、自由な発想をすすめる絵本として読みました。木の枝の働きや意味を決めるのは、 木の枝を使う主体の側にあります。

      ・・・

※『いっぽんのきのえだ』コンスタンス・アンダーソン作、千葉茂樹訳、ほるぷ出版 2019年

 

【 追 記 】

ゴリラにとっては、木の枝が杖になるということはわかり難いことかもしれません。「コンゴの森にすむゴリラは、木の枝で沼の水のふかさをはかる。そして、木の枝をつえにして沼地をわたる」と絵本にありました。  (2021/4/28)

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