ふるはしかずおの絵本ブログ3

『あかちゃんがやってくる』- ぼくの心の変化を描く一人称視点

「あかちゃんがくるのよ」

うちには あかちゃんなんか いらないんじゃない?」とぼく。

ここから、

あかちゃん いつくるの、ママ? あちゃんに あいたいよ」まで、ぼくの心が変わっていきます。

ぼくの心の変化を描く一人称視点です。

      ・・・

「いつくるの?」

「なんて なまえにするの?」

「あかちゃんは なにに なるのかな?」と尋ねるぼく。

「あかちゃんは、シェフになるかもね」(ママ)

「あかちゃんの つくったものなんて なんにも たべたくないよ]

     ・・・

このあと、

ママとぼくのやりとりが、繰り返されます。

絵描きさんになって すてきな絵を描くかもね。 

  めちゃくちゃに なるよ。

庭師になって、草や木を育てる人になるかしら。 

  ぼくとあそべるね。

 (ぼくも草花が大好きなのです)     

動物園ではたらくかしら。 

  トラに食べられちゃうかもね。

船乗りになって みんなを船にのせてくれないかなあ?   

  でも、船長は ぼくだよ。

銀行員になるかも?   

  そうしたら素敵だね。たくさん おかねをくれるよ。

公園で働くひとかも。 

  たくさんの落ち葉を集めるなんて できないじゃないの。

お医者様か看護師さん?

  あかちゃんに 世話してほしくないよ。

    ・・・

この後に、

冒頭の紹介した、ぼくの言葉がつづきます。

「あかちゃん いつくるの、ママ? あかちゃんに あいたいよ」

「もうすぐよ。おおいそぎで やってくるわ」

      ・・・

赤ちゃんが生まれ、

ぼくは、おじいちゃんと会いに行きます。

おじいちゃん、…… ぼくたち あかちゃんが だいすきに なるんだよね?

ママは、ぼくとの会話のなかで「あかちゃんは ~ になるかもしれないね」と繰り返します。あかちゃんが、絵描きさん、庭師、動物園ではたらく人、船乗り、銀行員、公園で働く人、お医者さんか看護師さんになったら、どうなるかしらと、ぼくに問いかけます。

ぼくは、あかちゃんがなる職業をぜんぶ否定します。でも、もしそうなったら、きっと楽しいだろうなと予感します。否、予感させていきます。賢いママです。ママとの会話の中で、ぼくの心が少しずつ変化していきました。一人称視点のおはなしの多くは、主人公(ぼく、わたし、おれ、わし・・・)の心や様子の変化を読むことです。

      

ジョン・バーニンガムとヘレン・オクセンバリー夫妻の初めての共作絵本です。

      ・・・

※『 あかちゃんが やってくる 』 ジョン・バーニンガム作、ヘレン・オクセンバリー絵、谷川俊太郎訳、イースト・プレス  2010年  (2020/3/19)

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