ふるはしかずおの絵本ブログ3

『「ニャオ」とウシがなきました』- 鳴き声、とりかえっこの面白さ

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鳴き声を とりかえこっこ の魔法のおはなし。
(とりかえっこって?)
おはなしを 読んでみましょう。
     ・・・
ある日の朝はやく、ネコが夢を見ていると、
「コッッケーコッコ オオオオオ!」
けたたましく鳴きました。
うるさくて うるさくて 眠れやしない、
なんとかしなくっちゃ、とネコは考えます。
     ・・・
魔法が得意のネコは・・・
つぎの日、
おんどり の声を ちいさくしてしまいました。
ブタ の声は、「コッコッ、コッコッ!」
めんどりたち は、「ブウ、ブウ!」。
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ひつじ は、「ワン、ワン」。
イヌ は、「メー、メー」。
ウシ は、「ニャオ、ニャオ」。
ウマ は、「ガー」。
アヒル は、「ヒーん」。
みんなの声を とりかえっこしてしまったのです。
     ・・・
ネコの悪巧みに気がついたみんなは、ネコを追いかけ、農場から追いだし、りんごの木に追いつめました。
ぼくの声をかえせ! わたしの声をかえせ!
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ネコは しっぽを ひとふり。
魔法は、ようやく解けました。
でも、ひとりだけ魔法の解けないものがいました。
それは、ネコ。ネコは、毎朝、口をあけ、あたまをのけぞらして、
「コッッケー コッコ オオオオオ!」
     ・・・
どうぶつたちの鳴き声が変わっているところが、笑いを誘います。強調して読んであげましょう。鳴き声を取りかえられたどうぶつたちの姿は、滑稽でもありますが、深刻な事態でもあります。鳴き声というのは、ある意味、どうぶつたちの本質的な特徴のひとつかもしれません。それがないといけないもの。アイデンティティの危機! ? ヽ(´Д`;)ノ
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ところで、この絵本が楽しめるのは、にわとりは「コッコッ、コッコッ」、ブタは「ブウ、ブウ」、ひつじは「メー、メー」、イヌは「「ワン、ワン」という常識が、子どもの側にあってのことです。2歳くらいでは、まだ面白さがよくわからないかもしれません。でも、この絵本の面白さが、だんだんわかってくるでしょう。
成長する子どもたち!
     ・・・
※『「ニャオ」とウシがなきました』 エマ・ドッド作、 青山 南訳 光村教育図書 2013年
   
【 追 記 】
この絵本は、「 さかさ唄 」の考えにもとづくおはなしと言えます。「さかさ唄」とは 「〈イ〉なる物に〈ロ〉なる物の機能を与えたり、その逆をおこなったりする遊び」(チュコフスキー、樹下節訳 『2歳から 5歳まで』 理論社)です。この原理を応用した絵本に、チュコフスキーの『めっちゃくちゃの おおさわぎ』(ヤールブソヴァ絵、田中潔訳 偕成社)があります。以前、この絵本ブログでも紹介しました。 (2018/6/6)

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