ふるはしかずおの絵本ブログ3

「おにたのぼうし」- あまんきみこの描く世界

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一日遅れになりましたが、節分を背景にした あまんきみこの「おにたのぼうし」を送ります。
おにた
おんなのこ
おかあさん
みんな、おもいやり、やさしさに 溢れています。
      ・・・
節分の夜、
「ふくはー うち。おにはー そと」
おにの こどもが 物置小屋の 天井に すんでました。
おにたです。
気のいい はずかしがり屋の おにたです。
おにたは 思います。
「にんげんて おかしいな。おには わるいって、きめているんだから。おににも、いろいろ あるのにな。」
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おにたは 女の子の家に いきます。
女の子の おかあさんは 病気で寝ています。
「おなかすいたでしょう?」
「あたし、さっきたべたの。」
女の子は、
知らない 男の子が あったかいあかごはんと うぐいすまめを 持ってきてくれたことを おかあさんに話しました。
おにたは 気がつきました。
 (あの ちび、なにも たべちゃ いないんだ。)
      ・・・
むぎわらぼうしをかぶった おにたが おぼんをもって やってきます。
「せつぶんだから、ごちそうが あまったんだ。」
「わたしに くれるの?」
女の子の 顔が、ぱっと 明るくなりました。
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女の子は、おかあさんの病気がなおるように、豆まきがしたいと言います。
まめたは、身震いして 言いました。
おににも、いろいろ あるのに。おにだって・・・」
おにたは いなくなりました。
むぎわらぼうしが 残っただけでした。
     ・・・
むぎわらぼうしの中あった くろい豆。
女の子は、そっと 豆をまきます。
「ふくはー うち。おにはー そと。」
まきながら、かんがえました。
 (さっきの こは、きっと かみさまだわ。そうよ、かみさま・・・
  だから、おかあさんだって もうすぐ よくなるわ。)
     ・・・
女の子は、最後まで 男の子がまめたであることを知りません。でも、読者は知っています。女の子は「さっきの こは、きっと かみさまだわ」と見ています。「かみさま」と女の子に認められていることに、おにたの救いがあります。読者もそう思うことでしょう。心優しいおにたの行為と読者の願いはかさなっています。相手を思いやる、美しい心が見える世界、あまんきみこの世界です。そして、岩崎ちひろの絵がこの世界を包みます。
     ・・・
※「おにたのぼうし」あまん きみこ作、岩崎 ちひろ絵、 ポプラ社 1969年  (2018/2/4)

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