ふるはしかずおの絵本ブログ3

『かげ』-幻想的な 世界の 奇妙な はなし

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とても  ふしぎな  おはなしです。

また、   結末に    びっくりします。

     

      月が まうえに のぼったので、木のかげは くろくなり、  
  やねは 
かがのように しろくなりました。

     

満月。

そして 深夜。

満月の光に てらされた 黒白の世界。

幻想的な世界です。

     ・・・

からすは、  

じぶんの下に、  

まっ黒な かげが、 うつっているのを 発見します。

そのかげは、 まるで生きているようです。

( からすは、 自分のかげだと 気づいていないのです。 )

     

      それでは、 おれと きょうそうしよう。

      おれは そらを とぶ。

      おまえは じべたを はしる。

      いいかい、 ほら、 おかのこちらに

      ちいさな  もりがあるだろう。

      あそこが けっしょうてんだ。

     

ここで、

「 月が まうえに のぼった 」 ことの意味が わかります。

からすと  かげの競争は、 どこまでいっても 勝負がつかないのです。

「 ようい、 どん 」

     ・・・

でも、

結着はつきません。

結局、

からすは、 力つき、 決勝点に、

「 ひらひら ばったりと、 くろい手ぶくろのように 」落ちたのでした。

          ・・・

おはなしの結末は?

       

      つぎの あさ、 もりへ 木を きりにいった   木こりが、 もりの

  そばの くさはらのうえに、 からすが  一わしんでいるのを 
  見ました。

  ( 冷静な作者の 視線を感じます )

         

からすは、

自分のかげと 競争しました。

他のからすではなく、

自分のなかから 出てきたかげに

戦いを 挑んだのです。

かげとは、 かたちの ないもの。

もし、 月が曇っていたら、  かげは ありませんでした。

かげは、

月のひかりと  からすの関係から うまれた 

現象です。

           ・・・

この「 かげ 」は、 なにを象徴しているのでしょうか。

     ・・・

私たちのなかにあって、

そこから 出てくること。

こころのなかの

      虚栄心?   偏見?   自己意識? ・・・

わたしたちも、

自分のかげと たたかう からすと

同じようなことを しているのかもしれません。

しかし、 南吉は、

からすのようで あっては ならないと

うったえるのです。

          ・・・

題名は 「 かげ 」。

実体のない かげ。

「 かげ 」 という題名が、 この悲劇を さらに深めています。

寓意を ふくんだ作品で、

子どもには むずかしいかもしれません。

しかし、 出合ってほしい絵本です。

     ・・・

※ 「 かげ 」  新美南吉作、  鈴木靖将絵、 新樹社  2013年

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