ふるはしかずおの絵本ブログ3

『虔十公園林』-「本当のさいわい」 とはなにか

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あけまして おめでとう ございます。

「 ふるはしかずおの絵本ブログ2 」 の ご愛読、 ありがとうございます。

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午年の最初は、

宮沢賢治の 「 虔十公園林 」 です。  

賢治の童話 の なかでも、  わたしの 好きな作品の ひとつです。

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おはなしの主人公は    虔十。

「 すこし足りない 」 と思われている    虔十。

しかし、 おっかさんにいわれると、

虔十は 水を 五百杯でも 汲くみました。 一日一杯 畑の 草も とりました。

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その 虔十が、

ある日、  突然、

「 おっがあ、 おらさ杉苗七百本、 買ってけろ  」 と いいだします。

家の うしろの あき地に   植えると いうのです。

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でも、

底は、  かたい粘土。

なにを 植えても そだたない ところです。

しかし、  おとうは いいます、

買ってやれ、  買ってやれ。   虔十ぁ 今まで 何一つだて 頼んだごとぁ 無ぃがったもの。 買ってやれ。

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虔十は、

杉を たいせつに   そだてました。 

村人に 「 えだ打ちがよい 」 と いわれると、

えだを   ぱちぱちと    落とします。

しかし、

落としたあと になって、

「 胸が痛い 」 ように思うのです。

杉たちにとって、 よかれと思ってしたのに、

杉たちは、

ほんとうによろこんでいるのか

不安に なっているのです。

    ( 賢治の世界では、 杉も 「杉たち」 です。)

しかし、

兄さんにはげまされて、

やっと安心したのでした。

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美しく なった杉林に、

子どもたちが、  毎日毎日、  集まってきました。

虔十は、

あきることなく、  

杉 と 子どもたちの姿を ながめています。

しかし、

このあと、  虔十は、

とつぜん、  

チフスにかかって    死んでしまいます。 ( 驚き!)

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     お話は ずんずん 急ぎます。 

      ( 実際、 このように書いてあります )

鉄道が とおり、  

停車場 や 工場ができ、

はたけや たんぼは、  

ずんずん    つぶれて いきました。

しかし、

虔十の林だけは、   そのまま、  のこっていました。

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ある日、

アメリカの 大学教授に なっている  

わかい博士が、

15年ぶりに   帰って きました。

そして、  

虔十の林を 見て、

おどろいて、 こういうのです。

      ここは   今は   学校の 運動場ですか。

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校長先生が    答えます。

いいえ、  学校の運動場では   ありません。

虔十の家族は、

虔十のたったひとつのかたみだから、

いくら困っても、

これをなくすることは できないと いう事情を 説明します。

博士は いいます。

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ああ  さうさう、 ありました、 ありました。    その虔十といふ人は  少し足りないと    私らは  思ってゐたのです。    いつでも はあはあ笑ってゐる 人でした。   毎日丁度 この辺に立って 私らの遊ぶのを   見てゐたのです。    この杉も みんな その人が 植ゑたのださうです。    あゝ 全く たれがかしこく    たれが賢くないかは わかりません。  たゞ  どこまでも 十力 の作用は 不思議です。

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博士の提案で、

「 虔十公園林 」 と名をつけて、

保存することになりました。

最後の美しいイメージ。 わたしのすきなところです。

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全く    全く この公園林の 杉の黒い  立派な緑、  さはやかな匂、 夏のすゞ しい陰、 月光色の芝生が これから何千人の人たちに 本当のさいはひが   何だかを教へるか   数へられませんでした

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「 本当のさいはひ ( 幸せ ) 」 とは、

いったい 何でしょうか。

「 本当の幸せとはなにか 」 と いう 「 問い 」 が、

投げかけられています。

まだ   終わらない おはなしが、

わたしたちのなかで、   続いていくのです。

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※ 『 虔十公園林 』   宮沢賢治作、  伊藤亘絵、  偕成社   1987年

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